スター対決、藤井が制す

ライター：渡部壮大　　更新： 2023年03月17日

　藤井聡太王将に羽生善治九段が挑戦した第72期ALSOK杯王将戦七番勝負。羽生九段が王将リーグを全勝で駆け抜け、将棋界が待ちに待ったスーパースター同士のタイトル戦が実現した。

第72期ALSOK杯王将戦七番勝負第1局

　第1局は静岡県掛川市「掛川城　二の丸茶室」にて。後手番羽生の作戦は一手損角換わり。藤井は早繰り銀で迎え撃った。

【第1図は△7四歩まで】

　第1図は△7四歩で▲7四桂を防いだところ。後手に余裕を与えると飛車の打ち込みがあるので、先手は手を止めることはできない。▲6五歩△7三銀▲6四歩△同銀▲6六桂が好手順だった。6六の歩を消して桂を打つのがポイント。▲7四桂を防いで△7三銀と引いたが、▲7七桂が攻めをつなぐ好手で、先手がペースをつかんでいる。以下も的確な指し回しで一手勝ちを収めて藤井が先勝。

写真：金子光徳

第72期ALSOK杯王将戦七番勝負第2局

　第2局は大阪府高槻市「山水館」にて。先手の羽生は相掛かりから早めに動いて戦いを起こしていった。

【第2図は△3一同玉まで】

　バラバラの後手陣をどう攻略するかだが、▲8二金が好手。金銀の連結を崩していけば手を作りやすくなる。△4二玉に▲2一飛と打ち込んで攻めを続ける。形勢は難しいながらまとめ切るのは難しかったか、次第に先手に形勢が傾き、最後はしっかりと逃げ切った。羽生が追い付いて1勝1敗に。

写真：飛龍

第72期ALSOK杯王将戦七番勝負第3局

　第3局は石川県金沢市「金沢東急ホテル」にて。後手の羽生は本局で雁木を採用。藤井は急戦を仕掛けていく。

【第3図は△4四玉まで】

　第3図は△4四玉と中段玉で粘りを見せたところ。しかし▲3七歩がこの手を逆用する好手だった。△同歩成に▲4五歩が厳しい。取れば▲3七桂が当たってくるし、本譜の△3三玉も下段に押し返されて苦しい形だ。確実に攻めをつないだ藤井が快勝で再びリード。

写真：夏芽

第72期ALSOK杯王将戦七番勝負第4局

　第4局は東京都立川市「ＳＯＲＡＮＯ　ＨＯＴＥＬ」にて。先手の羽生は角換わり腰掛け銀を選んだ。

【第4図は▲5二桂成まで】

　第4図は藤井が大長考で封じた局面。実戦は△5二同玉だったが、▲6四角成△5四銀▲2四飛△2三角▲同飛成△同金▲3一角が厳しく、羽生が優位に立った。以下は緩みなく攻めて快勝。羽生が再び追い付く。第4図では△5二同銀なら互角の将棋だったようだ。

写真：玉響

第72期ALSOK杯王将戦七番勝負第5局

　第5局は島根県大田市「さんべ荘」にて。後手の羽生は横歩取りを採用し、藤井は青野流で対抗して乱戦となる。

【第5図は▲3五銀まで】

　遊んでいる2六の銀を活用し、後手玉に詰めろを掛けたところ。ここでは△2九飛も攻防で有力だったようだ。実戦は△3三桂と跳ねる。2一への逃げ道を作った好防手だ。以下▲4六銀△6九飛▲4二銀成△同銀▲5四桂に△5一銀打と千日手含みの受けに回ったが、▲4二角成△同銀▲5三銀と桂を渡さず寄せるのが正確で、最後は▲4五銀と補充して一気の即詰みに打ち取った。△5一銀打では△5七銀からバラして△8四角の王手竜取りを掛ければ激戦だったようだ。シリーズ随一の熱戦を制して藤井が3勝2敗とリード。

写真：翔